2018年センター試験 数学I・A を解いてみたその4【第2問〔1〕】

第2問に入ります。前半が三角比,後半がデータの分析の内容で例年通りです。

〔1〕四角形の3辺と1本の対角線の長さが与えられています。ただcos∠ABCを求めるだけなら,△ABCに注目すれば十分です。3辺とも長さがわかっているので,余弦定理を使う定石パターンです。

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 \displaystyle \cos \angle \rm{ABC} = \frac{5^2 + 9^2 -6^2}{2\cdot 5\cdot 9}=\frac{70}{10\cdot 9}=\frac{7}{9}

sinは変換公式  \sin^2 \theta + \cos^2 \theta =1 で求めればOKです。

 \displaystyle \sin \angle \rm{ABC} =\sqrt{1-\left( \frac{7}{9}\right) ^2}=\sqrt{\frac{32}{81}}=\frac{4\sqrt{2}}{9}

 

次は今年の象徴的な問題になるかもしれません。

四角形ABCDが台形ということですが,どの対辺の組が平行なのかを調べよ,という内容です。根拠となる式が提示されているので,素直にAB・sin∠ABCの長さを求めます。

 \displaystyle \rm{AB} \sin\angle\rm{ABC}=5\cdot \frac{4\sqrt{2}}{9}=\frac{20\sqrt{2}}{9}

 \sqrt{2}\fallingdotseq 1.4 から,\displaystyle \frac{20\sqrt{2}}{9}\fallingdotseq \frac{28.2}{9}\gt 3,よって  \rm{CD} \lt \rm{AB}\cdot\sin\angle\rm{ABC} となります。

このことから,平行である対辺の組が決定されるということですが,実際に図をかいてみます。まず,一般的な台形で考えてみましょう。

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上図の点線が台形の「高さ」を表す線分になります。平行な2辺を結ぶ「辺」は,この高さより短くなることはありません。

これをもとに,題意の台形を考えてみます。AB・sin∠ABCが「頂点Aから辺BCに下ろした垂線の長さ」を表していることに注意してください。

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もし,辺ADとBCが平行であるとすると,ABsin∠ABCが台形の「高さ」となります。ところが,辺CDがそれより短いので,台形がつくれません。

したがって,平行なのは辺ABとCDということになります。

四角形の形状がわかったところで,最後にBDの長さを求めます。△BCD余弦定理を用いればよいです。∠BCDは,台形(平行線の内角)ということから,∠BCD=180°ー∠ABCとなることに気づけば問題ないですね。

 \displaystyle \rm{BD}^2 =9^2 +3^2 -2\cdot 9\cdot 3\cos\left( 180^{\circ} -\angle \rm{ABC} \right)  =90+2\cdot 9\cdot 3\cdot \frac{7}{9} =132

 \rm{BD} \gt 0 より  \rm{BD} =2\sqrt{33} となります。

 

マークをまとめておきます。

ア:7,イ:9,ウ:4,エ:2,オ:9,カ:0,キ:4,ク:2,ケコ:33

 

(追記)

この問題を象徴的と言ったのは,大学入試改革の流れが垣間見えたからです。現在文科相主導で「高大接続改革」が進められていますが,受験生の能力をより多面的にみる入試の実施が検討されています。大学入試センターが公開しているモデル問題も,生活や職業に結びついた題材だったり,探究的な内容になっていたりしています。

そういう意味では,この第2問は,三角比に関する定理や公式を利用する基礎的な力を確認するという問題と,基本的な知識を用いて数学的に考察するという問題がうまく振り分けられていると感じます。特に後半は,余弦定理から2次方程式を導いて……のようなゴリゴリ計算問題ではなく,やることは基本の計算だけど,何に着目するか,どんな式をつくるか,どう言い換えたらよいか,方針が立てられるかな?というような問題です。今までそういう問題がなかったというわけではないですが,改革の流れをくんでいる感じはします。現状の試験時間では,そんな余裕はないと思いますが,じっくりと,また色々な角度から味わえるような問題が増えるとよいです。