2018年センター試験 数学II・B を解いてみたその1【第1問〔1〕】

 ドイツ語も済んだので,数学に戻って今度は IIB をやっていきたいと思います。IA と比べると単元がより専門的なこともあって,数学そのものを処理し,探究していくような問題が多いです。

問題は下記から参照してください。

大学入試センター試験(2018年度) 問題・解答速報 - 毎日新聞

 

第 1 問は関数(三角関数,指数・対数関数)がテーマです。式の処理や高次方程式といった内容は,独立せずに本問や次の第 2 問などに組み込まれている感じですね。数II を受験して数 I は受けない,という人はほぼいないので,式の計算は数 I のほうに重みを置いている感じもします。

第 1 問 〔1〕

ラジアンの意味を問う問題です。定義や基本公式の証明を突いてくるのは,もうはやりというよりは指導的価値としてひとつの地位を占めているように思います。

例えば数研出版の教科書『数学II』では,ラジアンを次のように定義,説明しています。

円において,半径と同じ長さの弧に対する中心角の大きさを 1 ラジアンまたは 1 弧度という。半径 1 の円では,長さ 1 の弧に対する中心角の大きさが 1 ラジアンであり,長さ a の弧に対する中心角の大きさは, a ラジアンである。

このことをおさえていれば,迷わず ② が選べます。

よくよく考えてみれば,関数の概念は「三角」関数である sin cos tan などだけでなく,ラジアン自体にも関わるものですね。ラジアンが半径と弧の長さという 2 つの変量によって定まることを理解していなければなりません。

選択肢も少し紛らわしくしてあって,選択肢には「面積」という言葉も含まれています。「半径が一定ならば,ラジアン(中心角)は弧の長さに比例する」ことを理解していないと迷ってしまうでしょう。「半径」と「弧の長さ」と「面積」は互いに比例の関係にありますが,その比をきちんとおさえていることが重要です。つまり,上の「半径」と「弧の長さ」を用いた定義でなくても,例えば「半径」と「面積」からでもラジアンは定義できて,⓪ の記述は数値を修正をすれば正しくできます。半径が 1 のとき 円の面積は  \pi,円の弧の長さは  2\pi という関係から

「半径が 1,面積が  \displaystyle \frac{1}{2} の扇形の中心角の大きさ」

とすればもとの定義と同値です。同様に①も

「半径が  \pi,面積が  \displaystyle \frac{\pi^2}{2} の扇形の中心角の大きさ」

とすれば OK です。③ は半径と弧の長さの関係ですが,

「半径が  \pi,面積が  \pi の扇形の中心角の大きさ」

が 1 ラジアンです。

なお, \ell=r\theta \ell は弧の長さ, r は半径, \thetaラジアン)という公式を知っていれば  \ell=r=1 \theta=1 と即座にわかりますが,これは上記の比例関係から導かれるものです。その関係を理解した上で覚えてもらいたい式です。

 

(2) は実際に度数法と弧度法を変換する技能を問われています。変換公式を覚えていなくても,π ラジアン=180° からすぐに導けます。さきの比例関係から,ラジアンは 180° のうちの中心角の「割合」と考えるとよいです。中心角を  \theta とすると,ラジアン

 \displaystyle \frac{\theta}{180}\pi

で表せます。よって 144° は

 \displaystyle \frac{144}{180}\pi = \frac{4}{5}\pi ラジアン

となります。逆にラジアンから度数法に直すときは,この式を逆に使って

 \displaystyle \frac{23}{12}\times 180^{\circ} = 345^{\circ}

でよいですが, \displaystyle \frac{1}{12}\pi =15^{\circ} ということはぜひ知っておいてほしいです。 \displaystyle \frac{1}{6}\pi =30^{\circ} なのでこの半分ですね。そうすると,

 \displaystyle \frac{23}{12}\pi = 2\pi -\frac{1}{12}\pi = 360^{\circ}-15^{\circ}=345^{\circ}

とも求められます。

 

(3) は頻出の三角方程式です。式は複雑ですが,誘導があるのでそれに従っていきましょう。誘導がなくても,sin と cos の 1 次式なので,変数をそろえて合成する,という方針は見えてくると思います。

誘導ではまず sin の変数の方に合わせて,  \displaystyle x=\theta + \frac{\pi}{5} とおいています。すると cos の変数   \displaystyle x=\theta + \frac{\pi}{30} がどう表されるかですが,これは三角関数に関係なく,ただの分数の計算です。

 \displaystyle x=\theta + \frac{\pi}{5}=\theta + \frac{6}{30}\pi なので,

 \displaystyle \theta + \frac{\pi}{30}=x-\frac{5}{30}\pi=x-\frac{\pi}{6} です。

次に「加法定理を用いると」とありますが,適用するのは cos の部分です。いま変換した cos の式に加法定理を用いると,

 \displaystyle \cos \left( x-\frac{\pi}{6}\right) =\frac{\sqrt{3}}{2}\cos x +\frac{1}{2}\sin x 

となります。よって

 \displaystyle 2\sin x -2\cos  \left( x-\frac{\pi}{6}\right) =1 の式は

 \displaystyle 2\sin x -\left( \sqrt{3}\cos x +\sin x\right) =1

 \displaystyle \sin x -\sqrt{3}\cos x=1 …☆

となります。

これで sin と cos の変数の形がそろったので,合成すると

 \displaystyle \sin \left( x-\frac{\pi}{3}\right) =\frac{1}{2} 

となります。ここで  \displaystyle -\frac{\pi}{3} の求め方ですが,目標である  \displaystyle \sin \left( x-\alpha \right) という形を加法定理で展開した式を考えてみます。

 \displaystyle \sin \left( x-\alpha \right) =\sin x \cos\alpha - \cos x\sin\alpha となるので,これと ☆式の左辺を比較します。ただし,そのままでは  \sin\alpha の値が 1 を超えるので,sin と cos の係数から求めた  \displaystyle \sqrt{1^2 +\left( \sqrt{3}\right) ^2}=2 で割ります。すると,

 \displaystyle \cos\alpha =\frac{1}{2}, \; \sin\alpha=\frac{\sqrt{3}}{2}

となればよいことがわかります。よって, \displaystyle \alpha =\frac{\pi}{3} です。☆式の右辺も 2 で割ることになり,合成した式が完成します。

最後に,この式を満たす  \theta を求めます。マーク式なので割愛してもいいところですが,一応変数の範囲を確認しながら求めていきましょう。

まず方程式の変数は  \displaystyle x-\frac{\pi}{3} なので,これを   \theta の式に戻します。

  \displaystyle x=\theta +\frac{\pi}{5} だから

  \displaystyle x-\frac{\pi}{3}=\theta +\frac{\pi}{5}-\frac{\pi}{3}=\theta-\frac{2}{15}\pi 

です。次にこの変数のとる値の範囲を求めます。

 \displaystyle \frac{\pi}{2}\leqq \theta \leqq \pi だから

 \displaystyle \frac{11}{30}\pi\leqq \theta -\frac{2}{15}\pi \leqq \frac{13}{15}\pi

となります。この範囲で sin が  \displaystyle \frac{1}{2} になる値を求めればいいので,

 \displaystyle \theta -\frac{2}{15}\pi = \frac{5}{6}\pi

よって

 \displaystyle \theta = \frac{29}{30}\pi

となります。