(続き)任意の三角形は二等辺三角形である

前回の証明の欠陥ですが。
どうやら三角形の合同を証明する過程については間違いなさそうだし,どうやら最初の定義とか,〜が存在するってのを疑ってみるのが一番だと思います。


実際に二等辺三角形の場合を考えてみれば,∠Aの二等分線と辺BCの垂直二等分線は一致する(無数の交点をもつ)ので,この辺からアプローチしていけばいいんじゃないかと。

結論から言えば,「∠Aの二等分線と辺BCの垂直二等分線の交点Oが△ABCの内部には存在しえない」ということなんですが,別に外にあっても記号を対応させれば同様に合同であることは導けるんで,もうちょっと踏み込んだところに真相がありそうです。

というのは,ネットには「点Oが△ABCの外部にあるからこの図は間違いだ」で終わってるのが多くて,まぁ図はミスリードのためにわざと歪ませてるんだけれど(長方形のタングラムを直角三角形に敷き詰め直すと面積が減るのみたいなやつです),それ自体が証明を崩す理由にはならないと思うんです。要はAB=ACが成り立てばいいわけで,点Oが内にあろうと外にあろうと,それぞれが任意の△ABCの特殊な場合であって,外にあったってAB=ACは導けるわけで,この証明を根底から崩すものではないんじゃないか?結局は図の間違いを指摘したにすぎないんじゃないか?


まぁ,点Oが外にあることと,AB=ACが成り立たないことは結果的には同値になると思うんですが,もうひと噛ませあった方がいいと思います。



「(点Oが)外にあったってAB=ACは導けるわけで」と書きましたが,それが嘘であることを示せばいいわけです。

で,証明を省いて単刀直入に言うと,AB>ACならば点OからACにおろした垂線の足Qが辺ACの延長線上(外側)に存在することになるんです(AB<ACならば点R)。証明はベクトルやらたぶん幾何学的にもできると思うので,やってみるなり調べてみるなりしてみてください。


すると,AB=ACの一歩手前AR+RB=AQ+QCというのが成り立たなくなります(AC=AQ-QCになる)。

これでただ「点Oが△ABCの外側にある」というよりは欠陥の指摘としてはいいんじゃないかなぁと思います。まぁ説明に飛躍があるという感覚は人それぞれなので(点Q(R)が辺の延長線上にあるというのも証明なしではかなりの飛躍だと思います),どこまで,っていう線引きも難しいですが。


何はともあれ,幾何学は数学の中でもあまり好きじゃないはずの私が突っ込めた話題だったので,ここに載せてみました。

このほかにもいわゆる「パラドックス的証明」というのはいろいろあって,その欠陥の指摘が非常に数学的に深い意味を持ってたりします。アキレスと亀とか。

あと,この例だと証明自体は誤りなわけですが,欠陥を指摘した結果,AB=AQ+QC(AC=AR+RB)という定理が導けたわけです。大げさに言えばその辺は非ユークリッド幾何学の発見と似てるかな。




誤り等ありましたらご一報ください。