18きっぷの旅 その3

2010年3月3日(水) (3日目)

 sytoh家に泊めてもらい,お湯までもらい,油揚げの味噌汁と卵焼きとご飯をごちそうになって昼前に出発。3日目は京都めぐり。18きっぷは5日分で11,500円なので,1日あたり2,300円。大阪から京都まで往復でも1,080円。私鉄だともっと安いので,今日は18きっぷを利用せずに移動。時間と運賃のバランスを見て,大山崎までは阪急,そこから乗り換えて京都までJRで行くことに。

阪急電車のあずき色(通称阪急マルーン,栗色)はいつ見てもすばらしい。洗練された車両の線形に,レトロで荘厳な,それでいて決して重々しくはないカラー。魅きつけられっぱなし。大山崎駅で下車。これで阪急電車ともしばらくお別れ。ホームにしばらく残って,そのボディをしかと目に焼きつける。JR(こちらは山崎駅)へは徒歩で数分ほどの距離。そういえば京都府大阪府の境目にほど近い場所だった。山崎駅のホームには県境の標があったらしい。境界フェチの自分がこんなにおいしいスポットを見逃してしまっていたとは。残念極まりない。

 京都駅へ到着。中学校の修学旅行以来6年ぶりになると思う。ゴジラの影響か否か,南口のガラス張りの駅舎しか記憶になかったので,北口の天井の高さに圧倒される。携帯で撮ったら遠近感が殺されてハリボテみたいになったのでここには載せない。
 修学旅行では行かなかった金閣寺へ向かうことにする。バスが一番便利らしい。金閣寺までの40分ほどの時間は,車窓を見るだけで十分に消費できた。部外者にとって,京都といったらたいてい碁盤の目を鳥瞰した図を思い浮かべると思う。今はその盤の内部にいるわけで,ほぼ目線と水平に広がる町並みのところどころに,その碁盤図形が感じ取られるたびに,脳内の空間認識をつかさどる部位が嬉々として騒ぎ出す。やっぱり二度目はいい。そして安心する。あのとき感じた感覚と一緒だ,と。地図や写真から写し取ってきた頭の中の虚像が目の前の実像と重ね合わされる瞬間。昔と今の人の営みがひとつの軸上でつながる瞬間。京都にはそんな瞬間がありふれている。
 金閣寺に着く。金閣寺だけに限らないが,歴史的なものに出会うとき,途切れはしない車の音や人々の話し声の中に混じりながらも,沈黙の確かな存在を感じる。その空間だけ時間が止まっているような感じがする。というよりも,時間の流れをを隔たりとして認識しない,すべての時間がそこに共存しているような,そういった方が近いかもしれない。だからその沈黙に身を委ねてみると,当時の情景がはたと感じられる。自分がタイムスリップしたわけでも,当時のものが現在にタイムスリップしてきたわけでもなく,両方が共存しているような感じ。時間という物理的次元を含まない空間に来たような感じ。

 抽象的な話になってしまったので戻す。さきの京都駅とか,山なんかと違って,金閣だけは携帯で撮ってもその雰囲気があまり削がれない。パンフレットなんかで見るようなものと,肉眼で見るものと,素人が携帯の写真でちょこっと写したものと,だいたい同じ。というような言い方をするともともと金閣に貫禄が無いように思われるかもしれないが,そういうわけではない。写真にしても削がれないものがそこにはある。文字通り金張りの煌びやかさ,建物のみならず周囲の池や小島を含めた構図,その姿は水晶体にもただのレンズにも同じように浮かび上がった。

 鹿苑寺の境内には金閣のほかにもいろいろな建造物がある。上の写真のような地蔵なんかは金閣とは対照的に,その雨風に晒されて浸食されたさまが,これまた違った角度から時間の流れを感じさせる。
 境内をまわり終えた頃には,太陽はかなり西に傾いていた。例のakira710は今日はせいべと行動を共にしているらしい。彼らはこれから金閣寺を見るということだったので,あわよくばすれ違えたらと立命館大学方面へ足を運ぶ。
 なか卯で遅めの昼ごはん。というのも,彼らがそこにいたので。せいべと3分足らずの対面。お目にかかれただけ良しとしよう。
 合流したのも束の間,再びひとりになり,次の目的地を考える。銀閣寺も行ったことが無い。が,一度行った清水寺もまわりたい。7時過ぎには大阪に戻らなくてはならないので,時間的にどちらかを選ばざるを得ない。清水寺を選ぶ。理由は前記事か本記事のある部分を読んでもらえばわかると思う。
 いったん京都駅へ戻り,東福寺から京阪で五条へ出て清水へ。バスを烏丸五条で降りて歩いたほうが早かった気もしなくもないが,今更どうしようもない。五条からは6年前と全く同じルートをたどる。店の並んでいる通りではなく,一本外れた墓地の方の道を登る。日暮れが近い。清水寺境内の拝観は18時まで。もう一度同じ場所で同じ気分に浸りたかっただけで,そう長々といるつもりもなかったので時間については特に焦ることはなかった。


 閉まる間際になっても,観光客は数十人いた。前を歩いていたカップルがおみくじを引いていたので,自分も便乗して引いてみる。6年前は大吉だった。東大寺でも大吉だった。今回は凶。というか先のカップルの男の方が引いた番号と同じだ。ということはそいつも凶か。うひひひひお幸せに。なんて思っているから凶なんか引くんだ。第一よく混ぜなかった自分が悪い。

 時間の限り境内の隅々や舞台の懸造,音羽の滝などを見ながら帰路につく。帰り道はさすがに暗くなったので,断崖絶壁の墓地の道ではなく店の並ぶ道の方を通る。五条に戻るまでに雨が降ってきた。天気予報では局所的に降雨があるものの,心配するほどではないと伝えていたが,おみくじのせいかその局所にいたようである。しかもだんだん雨脚が強くなる。まわりの歩行者のほとんどが傘を開き始めたころ,地下鉄駅に着いた。このまま京阪から御堂筋線を乗り継いで梅田まで行く。
 大阪も雨だった。夜はakira710に加えて地元のヒサトとおでんと合流。串屋で夕食。野菜からなにからいろいろな串に刺さった具材をテーブルでセルフで揚げるスタイルのお店。数年前に北千住で同じような店に行ったことがある。そんなわけで今日もアルコールを摂取。昨日もそうだったけど食事をしながら適度に呑むので体にはちょうどいい。
 今晩は2日ぶりにネットカフェに宿泊。京橋にある名古屋と同じ系列の店だったが,入店した時点では個室に空きが無かったので,しばらくオープンスペースで待機。運よく30分ほどで空いたので個室へ移動。さて今日もゆっくり横に,と思ったら普通の椅子の部屋に案内された。事前の調べによるとフラット席もあるはずだけれども,希望も何も聞かれることなく椅子の部屋へ。まぁ混んでたし店員が希望の部屋を聞かなかったのは空きが無かったということで了解しておこう。それはいいけど客がもめている。警察まで来た。さすが大阪。同じ日本とはいえ何かが違うなと感じたが,まだ旅は続くので寝ることにする。にしても寝づらい。椅子なので体を平らにできない。体を起こした状態だと熟睡できない。仕方が無いので床で寝ようかとも考えたが,なんとか体を丸めてネコのように椅子の上で横になることができた。
 あ,寝る前に次の日の予定を立てたんだった。明日は8時過ぎに大阪を出て,可能な限り西へ向かう。移動だけなら九州上陸も可能ではあったが,せっかくなので観光しよう。というわけで,広島を目的地に設定。今日はここまで。<お会いしたわさらー>
(akira710,)せいべ,ヒサト,おでん<取得したDoCoMo iエリア(重複除く)>
高槻/茨木/摂津,長岡京市/向日市,東寺/吉祥院周辺,桂/洛西,京都駅周辺,五条通周辺,三条/四条,二条城/御所周辺,北山通/金閣寺/上賀茂周辺,祇園/東山,伏見/桃山/淀,枚方/寝屋川周辺,大阪城周辺,北浜/本町,鶴橋/上本町/今里<出費>
[交通費]
阪急京都線
上新庄大山崎) \270
京都市営バス
(京都駅〜金閣寺道) \220
金閣寺道〜京都駅) \220
京阪本線
東福寺清水五条) \150
清水五条淀屋橋) \400
大阪市営地下鉄御堂筋線
淀屋橋〜梅田) \200
JR奈良線
(京都〜東福寺)\140

[食費]
なか卯立命館大学前店
(牛丼小うどんセット) \490
串や \1,000
am/pm京橋東店 \???

[宿泊費]
MANBOO!京橋店
(8Hナイトパック) \1,200

[物品費]
清水寺おみくじ \300

[施設入場料]
金閣寺 \400
清水寺 \300

[その他]
コインロッカー \300