2012年8月 2回目の九州へ行ってきた 6日目

※この記事は 2012年8月の旅行をまとめたものです。記事中の情報や画像に関する内容は当時のものであり,現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。

  

2012年8月8日(水) 6日目/8日 

日付が飛んでいますが,6日,7日は小倉で行われたある学会に出席していました。九州に来たのはこれが本来の用事だったのですが,ついでのような状態ですね。この2日間は乗りつぶしはお休みして,おいしいものを食べたり,そこそこいいホテルに泊まったりしました。

この日は学会が思ったよりも早く終わったので,後日の計画に回していた西鉄区間などを乗りつぶしながら,熊本へ向かいたいと思います。

出発に先立って,学会で広辞苑ほどある分厚い冊子を2冊ももらったので,小倉駅前の郵便局で自宅へ送りました。長旅に余計な荷物は厳禁ですね。あと,着替えですが,ホテル滞在中にランドリーを使えたので実質4日分程度の着替えで済んでいます。

300円で新幹線に乗る

まずは知る人ぞ知る,博多南線を乗ります。博多から博多南駅までの区間は,在来線でありながら新幹線しか運行していない区間です。どうせなら新幹線の車庫があるところまで旅客営業しよう,と造られた駅です。特例で,運賃190円(現在は200円)+特急料金100円で,新幹線に乗ることができます。なお,在来線といえど特急に乗っているので,運賃分に18きっぷは利用できません。

f:id:tak119:20120808134535j:plain

この駅,新幹線に乗れるというだけでなく,個人的にもう一つ付加価値があります。博多南駅の改札を出ると,そのまま高架で道路の上を渡って向かい側のビルへ行けるようになっているのですが,博多南駅の所在地は春日市,ビルは筑紫郡那珂川町です。つまり,いま渡った道路に市町の境界が走っているわけです。

f:id:tak119:20120808134503j:plain

先日山口県と福岡県の境界にキャッキャしていましたが,今日もビルと駅の間を何往復もして感慨もひとしおです。

ちなみに,この那珂川町ですが,前々から人口が5万人に達するだの達しただの話題になっていて,今年10月についに市制施行をする見込みだそうです。平成の大合併が一段落して当時の熱気が失われたいま,地理クラスタにとっては久々に血が騒ぐ情報です。

 

16か月ぶりにピースを埋める

さて,博多南線を制覇した後は,博多に戻って南下します。博多~大牟田間は,JRと西鉄が並走していますが,すでに乗っている区間とできるだけかぶらないようなルートを取ります。今回は基山までJRで行き,小郡へ移動してそこから先は西鉄で行きます。甘木鉄道線の小郡駅と,西鉄小郡駅は,近接していますが一度駅を出て徒歩連絡です。

f:id:tak119:20120808150047j:plain  f:id:tak119:20120808150244j:plain

今日のルートは,一度に乗りつぶそうとしないのがポイントです。残ったJR線鳥栖~基山間と,西鉄線小郡二日市間は,後日戻ってきたときに回収するという算段です。ちょうどパズルのピースを埋めていくような感じです。記事末の新規乗車区間を見てもらうと分かると思いますが,新しい路線を一気に乗りつぶすのでなく,途切れていた区間をつないでいきます。

f:id:tak119:20180221205930p:plain

前回九州に来たときは,乗りつぶしという概念を持たない旅でした(エリア取得のほうがメインでした)。そのため,熊本近郊にもいくつか乗り残していた区間がありますが,ここで回収します。

f:id:tak119:20120808160219j:plain  f:id:tak119:20120808171731j:plain

熊本に着いたのは17時過ぎでした。あとは,残った時間で熊本市内の市電に乗ります。市電から熊電の藤崎宮前までは,確か歩いたんだったと思います。

f:id:tak119:20120808173057j:plain  f:id:tak119:20120808182826j:plain

f:id:tak119:20120808191714j:plain  f:id:tak119:20120808193233j:plain

ひと通り乗りつぶした後は,熊本市の繁華街(下通り)を散策しました。この頃は1日目の記事でも書いたアーケードゲームにはまっていたらしく,熊本でもプレイした記憶があります。

ハーゲンダッツの店もありました。松屋で夕食を済ませた後だったので,寄りませんでしたが。

f:id:tak119:20120808203708j:plain

f:id:tak119:20180221210032p:plain

宿泊は,次の日に南阿蘇鉄道に乗る予定なので,できる限り阿蘇方面よりのネットカフェを選びました。大津町にあるチェーン店です。深夜ということもありましたが,駅前は同じく列車から降りて家路につく地域住民しかいなく,非常に静かでした。鼻を突く肥やしの匂いが漂っていたこともあって,わりと記憶がはっきりしています。

f:id:tak119:20120808232130j:plain

明日は熊本の残りの路線に乗って,有明海を横断して長崎へ上陸します。

 

【記録】

<乗車行程>(計画を変更したので時刻や行き先は不明です)

小倉---(鹿児島本線)---博多---(博多南線 290円)---博多南---(博多南線 290円)---博多---(鹿児島本線)---基山---(甘木鉄道線)---小郡/西鉄小郡---(西鉄天神大牟田線)---大牟田---(鹿児島本線)---熊本/熊本駅前---(熊本市電)---田崎橋---熊本駅前/熊本---(豊肥本線)---新水前寺/新水前寺駅前---(熊本市電)---健軍町---(熊本市電)---通町筋---(徒歩)---藤崎宮前---(熊本電鉄藤崎線)---北熊本---(熊本電鉄菊池線)---上熊本---(熊本市電)---熊本市内散策---(熊本市電)---新水前寺---(豊肥本線)---肥後大津

 

<新規乗車区間

JR博多南線 博多~博多南 8.5 キロ〔完乗〕

JR鹿児島本線 原田~基山 2.5 キロ

JR鹿児島本線 上熊本~熊本 3.3 キロ

JR豊肥本線 熊本~新水前寺 5.2 キロ

JR線計 19.5 キロ

 

甘木鉄道線 基山~小郡 3.8 キロ

西鉄天神大牟田線 西鉄小郡大牟田 46.1 キロ

熊本市交通局田崎線 熊本駅前~田崎橋 0.5 キロ〔完乗〕

熊本市交通局水前寺線 新水前寺駅前~水前寺公園 0.7 キロ〔完乗〕

熊本市交通局健軍線 水前寺公園健軍町 3.0 キロ〔完乗〕

熊本電鉄藤崎線 藤崎宮前北熊本 2.3 キロ〔完乗〕

熊本電鉄菊池線 北熊本上熊本 3.4 キロ

私鉄線計 59.8 キロ

2012年8月 2回目の九州へ行ってきた 3日目

※この記事は 2012 年 8 月の旅行をまとめたものです。記事中の情報や画像に関する内容は当時のものであり,現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。

  

2012年8月5日(日) 3日目/8日

最適経路問題の解

本日は朝から福岡近郊の路線を乗りつぶします。今日は 18 きっぷではなく,九州の JR 線と私鉄線が乗り放題の「旅名人の九州満喫きっぷ」を使います。10,000円(+税)で 3 日(人)分利用できるという,18 きっぷの九州限定コンパクト版です。乗りつぶしには非常に重宝するアイテムのひとつです。

さて,このあたりの路線は香椎線など,終端が他の路線に接続していないいわゆる「盲腸線」が多いので,必然的に折り返しが多くなり,二度描きルートが多発します。ダイヤの時刻とも照らし合わせて,できるだけ無駄のないルートを計画したつもりです。

駅標の写真の方はあまり収めていませんでした。

香椎線 終着地 宇美駅

f:id:tak119:20120805065224j:plain

香椎線 終着地 西戸崎

f:id:tak119:20120805080746j:plain

西鉄貝塚線 終着地 西鉄新宮駅

f:id:tak119:20120805084128j:plain

福岡市営地下鉄 終着地 福岡空港駅

f:id:tak119:20120805094211j:plain

 JR後藤寺線 終着地 田川後藤寺

f:id:tak119:20120805120918j:plain

時系列に掲載しているのですが,皆さんはルートを推定できるでしょうか。

<解>

JR篠栗線 柚須→吉塚(折り返し)→長者原

JR香椎線 長者原宇美(折り返し)→西戸崎(折り返し)→和白

西鉄貝塚線 和白西鉄新宮(折り返し)→(福岡市地下鉄箱崎線直通)→中洲川端

福岡市地下鉄箱崎線 中洲川端福岡空港(折り返し)→博多

JR鹿児島本線 博多→原田

JR筑豊本線 原田→新飯塚

JR後藤寺線 新飯塚田川後藤寺

(太字は上の駅標の写真にある駅です)

f:id:tak119:20180219200222p:plain

なお,博多~田川後藤寺間は,経由地の写真がないのですが,接続時間が少なかったのでしょう。ここで大回りして乗りつぶしていたようです。

後藤寺からは北九州方面に向かうのですが,ルートがJRと私鉄と両方あります。まずはそのままJRで向かいます。門司港に着くころには,もうお昼を回っていました。

境界線フェチ,県境を踏む

f:id:tak119:20120805134457j:plain  f:id:tak119:20120805135330j:plain

門司港に着いた後は関門海峡を散策しました。門司港からレトロ観光線という観光列車が走っていて,関門海峡の真っ先まで行けます。車両はトロッコ型で窓がないので,気持ちよい風を浴びながらレトロな街並みや海の風景をじかに見ることができます。

f:id:tak119:20120805135526j:plain  f:id:tak119:20120805141827j:plain

上を関門橋,下を関門トンネルが走っているのですが,関門トンネルには歩行者(と二輪車)用通路があって,関門海峡を歩いて渡ることができます。

f:id:tak119:20120805141909j:plain  f:id:tak119:20120805142050j:plain  f:id:tak119:20120805142121j:plain

歩道といえど,九州と本州を結ぶ大動脈なので,れっきとした国道 2 号に指定されているのですね。海の中の地下道ですが,明るくて人通りもけっこうあったので,気軽に歩いていけます。

f:id:tak119:20120805142543j:plain  f:id:tak119:20120805142556j:plain  f:id:tak119:20120805142610j:plain

九州側を出発して 7,8 分ほどで,中間地点に到達しました。ちゃんと境界線が引かれていて感激です。境界線を徒歩で踏むのは何度目でしょうか。人生の中でも至福のひと時です。

トンネルの全長は 800m ほどで,15 分ほどで対岸の山口県下関市に出ることができます。

f:id:tak119:20120805143116j:plain  f:id:tak119:20120805143514j:plain  f:id:tak119:20120805143543j:plain

下関側には武蔵・小次郎の像などがありました。対岸がさっきまでいた福岡県です。 海辺なので風も心地よく,800 年ほど前にこのあたりでかの合戦があったのか,などと思いをはせながら九州側へ戻ります。

豊前の写真が少なくて憮然とする

さて,ここからまた乗りつぶしが始まるのですが,まずは小倉からモノレールに乗りました。終点の企救丘駅には,JRの志井公園駅が近接しているので徒歩で連絡することができます。駅前にプールがあったので子ども連れでにぎわっていました。

f:id:tak119:20120805162147j:plain  f:id:tak119:20120805174818j:plain

志井公園からは午前中に上ってきた日田彦山線を田川まで戻り,今度は私鉄経由で北九州へ帰還するという算段です。

この平成筑豊鉄道,田川側は伊田線糸田線に分かれていて,ここでも乗りつぶすには二度描きする必要があります。

終着地の直方からは少し歩いて,筑豊電鉄線に乗り換えます。JR線も並走しているのですが,そちらは昨日乗車した区間です。ちょうどいい具合に乗りつぶし区間が埋まっていきます。筑豊直方駅は高架で,わりとよい規格で造られている感じがしました。

f:id:tak119:20120805182134j:plain  f:id:tak119:20120805191025j:plain

筑豊電鉄の終着駅は黒崎駅で,これで北九州へ戻ってこられました。次に向かうのは,皿倉山ケーブルです。広い意味の鉄道には,いわゆるケーブルカーなどの索道も含まれます。距離は短いですが,ここで乗っておきたいと思います。

山頂へは,ケーブルカーからスロープカーに乗り継ぎます。スロープカーは鉄道に入りませんが,せっかくなので山頂まで行ってみます。

f:id:tak119:20120805195559j:plain

山の上なだけあって,非常にきれいな夜景を眺めることができます。ビアガーデンも併設されていて,日曜日といえど真夏なので暑気払いの社会人たちで大変にぎわっていました。

f:id:tak119:20120805203549j:plain  f:id:tak119:20120805204916j:plain

夜景を楽しんだ後は,最後に筑豊本線の北端部(若松線)を乗って,本日の行程は終了です。この区間盲腸線で,バスで若戸大橋を渡り,対岸へ行こうとも思ったのですが,都市部なだけあって列車の本数も多く,すぐに小倉まで戻ることができました。ちなみに,この途中折尾駅での待ち時間に,帰りの新幹線の切符を購入しました。博多から新横浜まで一気に戻るので,この旅一番の出費です。

f:id:tak119:20120805215508j:plain  f:id:tak119:20120805224243j:plain

翌日・翌々日は学会(こっちが本来の用事)に出席するために,乗りつぶしはお休みしました。2日間小倉に滞在です。せわしなく移動してきた体にとっては,ちょうどよい休息になりそうです。次の記事は6日目からになります。

f:id:tak119:20180220203605p:plain

 

【記録】

<乗車行程>(金額の明記がないものは九州満喫きっぷ使用)

柚須609---(篠栗線・博多行)---612吉塚616---(篠栗線・直方行)---624長者原631---(香椎線)---650宇美706---(香椎線)---805西戸崎812---(香椎線・宇美行き)---827和白834---(西鉄貝塚線)---841西鉄新宮843---(西鉄貝塚線)---907貝塚914---(福岡市地下鉄箱崎線姪浜行)---924中洲川端932---(福岡市地下鉄空港線)---941福岡空港945---(福岡市地下鉄空港線)---950博多1012---(鹿児島本線)---1044原田1052---(筑豊本線)---1121桂川1133---(筑豊本線快速・直方行)---1143新飯塚1147---(後藤寺線)---1207田川後藤寺1218---(日田彦山線・小倉行)---1314西小倉1322---(鹿児島本線)---1342門司港/九州鉄道記念館1400---(門司港レトロ観光線)---1410関門海峡めかり(散策)1515---(門司港レトロ観光線)---1525九州鉄道記念館/門司港1536---(鹿児島本線早岐行)---1549小倉1552---(小倉モノレール)---1611企救丘/志井公園1641---(日田彦山線添田行)---1717田川後藤寺1720---(平成筑豊鉄道糸田線・直方行)---1731金田1733---(平成筑豊鉄道伊田線)---1745田川伊田1749---(平成筑豊鉄道伊田線)---1821直方/筑豊直方1837---(筑豊電鉄)---1909黒崎駅前/黒崎1915---(鹿児島本線快速・門司港行)---1919八幡1930---(シャトルバス:無料)---1935山麓1940---(皿倉山ケーブルカー・スロープカー:往復 1,200 円)---1950展望台---八幡---折尾---(筑豊本線)---若松---折尾---小倉

 

<新規乗車区間

JR篠栗線 吉塚~柚須 2.5 キロ〔完乗〕

JR香椎線 長者原~宇美 6.2 キロ

JR香椎線 長者原西戸崎 19.2 キロ〔完乗〕

JR鹿児島本線 大野城~原田 10.5 キロ

JR筑豊本線 桂川~原田  20.8 キロ

JR後藤寺線 新飯塚田川後藤寺 13.3 キロ〔完乗〕

JR日田彦山線 田川後藤寺~城野 30.0 キロ

JR鹿児島本線 門司~門司港 5.5 キロ

JR筑豊本線 折尾~若松 10.8 キロ〔完乗〕

JR線計 118.8 キロ

 

西鉄貝塚線 和白西鉄新宮 3.8 キロ

西鉄貝塚線 和白貝塚 7.2 キロ〔完乗〕

福岡市地下鉄貝塚線 貝塚中洲川端 4.7 キロ〔完乗〕

福岡市地下鉄空港線 博多~福岡空港 3.3 キロ〔完乗〕

平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線 九州鉄道記念館関門海峡めかり 2.1 キロ〔完乗〕

平成筑豊鉄道糸田線 田川後藤寺~金田 6.8 キロ〔完乗〕

平成筑豊鉄道伊田線 金田~田川伊田 6.3 キロ

平成筑豊鉄道伊田線 金田~直方 9.8 キロ〔完乗〕

筑豊電気鉄道 筑豊直方黒崎駅前 16.0キロ〔完乗〕

皿倉登山鉄道 山麓~山上 1.1 キロ〔完乗〕

私鉄線計 38.3 キロ

2012年8月 2回目の九州へ行ってきた 2日目(ありがとう三江線記念)

※この記事は 2012 年 8 月の旅行をまとめたものです。記事中の情報や画像に関する内容は当時のものであり,現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。

  

2012年8月4日(土) 2日目/8日

井原の道を進む

岡山で一泊して,早朝から出発します。朝マックに寄った駅前のマクドナルドの店舗の間取りが個人的に気に入りました。

JR伯備線の直通で,昨日散策した清音駅まで行き,そこから井原鉄道線に乗り西へ向かいます。昨日買っておいた 1 日乗車券(800 円)を使いました。片道だけでも得です。

※ 1 日乗車券は現在では 1,000 円になっています。運賃も改定されているかもしれません。

f:id:tak119:20180215205257p:plain

井原線の終着駅は広島県に入り,神辺(かんなべ)駅というところです。ここからはJR線に戻ります。福塩線が接続しています。進む方向的には「塩」の塩町方面なのですが,乗りつぶしのためにいったん「福」の福山駅方面へ向かいます。

f:id:tak119:20120804071444j:plain

福山は何度か来ているのですが,何かと早朝に来ることが多くて,今回も到着したのは朝 7 時頃でした。前に来たときは夜行バスで,まだ日が昇らないうちに駅前に着いて,福山城を散策した覚えがあります。

福山からは福塩線を折り返し,そのまま終点の三次(塩町から芸備線直通)へ向かいます。車窓からの写真の 1 枚でもあればよかったのですが,ほとんど山間部ということもあって,これといって目を引くような風景もなくただ列車に揺られていただけだったようです。

在りし日の三江線

福山からは三江線に乗り,山陰へ抜けます。この三江線,報道されているように残念ながら今年の 3 月をもって廃止となります。以前から JR 西日本が赤字路線の廃止を示唆していることもあっての流れなのですが,同じく山陰・山陽を結ぶ伯備線と比べると都市間連絡の役割は薄く,木次線と比べると道路網が整備されていることもあって,白羽の矢が立ってしまったのでしょう。閑散路線ならではの味わいや地域の風情もあるだけに,惜しいばかりです。

f:id:tak119:20180215205335p:plainこの三江線ですが,本数が少ないのはもちろん,今回乗車した列車が途中の石見川本駅で 2 時間弱停車するというなかなかのダイヤです。旅人泣かせ,と思いきや,停車がちょうどお昼時で,近くに食事ができる施設があることがわかりました。乗りつぶしが目的の旅となると,街を歩き回ったりすることも少ないのですが,そういう意味ではこの停車時間は川本町をゆっくりと堪能できるとても有意義なものとなりました。

f:id:tak119:20120804120928j:plain  f:id:tak119:20120804120949j:plain  

石見川本駅から数分歩くと,「音戯館(おとぎかん,現在は「かわもとおとぎ館」という名称だそうです)」という施設があり,温水プールやホテルなどが入っている複合型の建物です。レストランもあったので,昼食もそこでとりました(同じく乗り鉄さんと思われる方が数人いました)。

f:id:tak119:20120804121106j:plain 石見川本ではしまねっこがお出迎え

お昼を過ぎて,再び三江線に乗車します。三江線は線形もあまりよくないので,低速のまま終着駅の江津へたどり着きました。

意外と長かった山陰線

益田からは山陰本線に乗り換えてひたすら西へ向かいます。

f:id:tak119:20120804150103j:plain  f:id:tak119:20120804164323j:plain

途中益田駅で乗り継ぎがあったのですが,接続待ちの時間に,駅に併設しているレコード店(楽器店?)に寄りました。実を言うと,この店の記憶だけが断片的に残っていて,今までふとした時に何度も思い起こしては,いつどこの場面だったかを思い出せずにもどかしい思いをしていました。それが先日とあるテレビ番組で(それが記憶喪失の人の足取りをたどるというもので),自分の頭の中の情景とテレビ画面の風景が一致して,感激しつつも妙な気持ちになりました。

f:id:tak119:20180216193808p:plain

山陰本線は以前京都側から江津まで乗ったことがあるので,今回の西側を走破すると完乗となります。画像の情報によると,江津着が 15 時ごろ,益田が 16 時半前後,下関が 21 時半ということで,山陰線だけで半日近く乗っていたことになります。まぁ朝の 5 時に岡山を出てから乗りっぱなしなので,どうこう言うこともないですが。今と比べると体力的にも若かったなと感じます。

f:id:tak119:20120804212543j:plain

下関に着きましたが,さらに西へ行きます。今日のうちに九州入りして,明日は福岡の鉄道を可能な限り乗りつくす予定です。とりあえず拠点を福岡市近郊にする計画だったので,目的地のネットカフェ最寄の柚須駅まで向かいます。

夜が更けても路線開拓の精力は尽きません。柚須駅博多駅から 2 駅の場所にあるのですが,鹿児島本線は乗車済みなので,折尾駅から筑豊本線に入り,篠栗線を経由するルートで行きました。

f:id:tak119:20180216194220p:plain

f:id:tak119:20120804235640j:plain

到着したのはもう日付が変わる頃でしたが,無事に完了できました。計画当初から,とにかく列車に乗るためだけの 1 日のつもりでしたが,川本でのおいしい昼食や益田での楽器店立ち寄りなど,その街のものにのんびりと触れることができたのがよかったです。

 

【記録】

<乗車行程>(金額の明記がないものは青春 18 きっぷ使用)

岡山528---(伯備線・米子行)---552清音601---(井原鉄道線 800円)---650神辺653---(福塩線)---707福山718---(福塩線)---805府中810---(福塩線)---955三次957---(三江線)---1208石見川本1353---(三江線)---1459江津1504---(快速アクアライナー)---1640益田1721---(山陰本線)---2124下関2145---(山陽本線)---2159小倉2203---(鹿児島本線・荒尾行)---2223折尾2232---(筑豊本線・博多行)---2352柚須

 

<新規乗車区間

JR福塩線 神辺~福山 8.4 キロ

JR福塩線 神辺~塩町 69.6 キロ〔完乗〕

JR三江線 三次~江津 108.1 キロ〔完乗〕

JR山陰本線 江津~幡生 219.5 キロ〔完乗〕

JR筑豊本線 折尾~桂川 34.5 キロ

JR篠栗線 桂川~柚須 22.6 キロ

JR線計 462.7 キロ

 

井原鉄道線 清音~神辺 38.3 キロ〔完乗〕

私鉄線計 38.3 キロ

2012年8月 2回目の九州へ行ってきた 1日目

※この記事は 2012 年 8 月の旅行をまとめたものです。記事中の情報や画像に関する内容は当時のものであり,現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。

 

一人旅の記録を再開したいと思います。当時は自分の頭の中に留めておくだけで満足だったのですが,最近のものでも5年以上経って記憶が薄らいできたこともあり,形にしておこうと思った次第です。

 

ちょうど今年の3月末に三江線が廃止されるということもあって,今回はその三江線にも乗車した旅行の記録をつづりたいと思います。時期は 2012 年 8 月上旬です。そもそもは北九州で開催される学会に出席するためのもので,どうせならと行程の前後にプライベートな旅をくっつけたのが今回の顛末です。

実のところ,いつどこで何をしたかは,携帯電話で撮影した写真が手がかりです。思い出せる範囲で書いていきます。

(追記)旅程をまとめたデータを発見しました。今後の記事はこれも手がかりにして書いていきます。また,乗車行程が詳細に分かったので,記事の最後に載せておきます。

 

2012年8月3日(金) 1日目/8日

おはよう大垣! ひたすら西へ?

f:id:tak119:20120803070317j:plain

一番最初の写真が大垣駅の駅標なので,例によって「快速ムーンライトながら」を利用したようです。今では運行日がかなり限られているようですね。たいてい西日本へ出かけるときはできる限り「ながら」を使うようにしていました。書き忘れましたが,今回も青春18 きっぷを使っています。私の住んでいた横浜は前日の発着になりもったいないので,相鉄線小田急線を使って小田原まで行き,日付が変わってから「ながら」に乗車しました。

f:id:tak119:20180214210948p:plain

大垣到着後,ひたすら西へ向かう人は新快速に乗り継ぐわけですが,確かこの頃はもうダイヤが改正されていて,名物大垣ダッシュはそれほど見られなかったと思います。それでも走っている人はいましたが。

ん?この駅標の行き先表示……

 

思い出しました

よく見ると大垣の写真の駅標,JR でなく養老鉄道のものですね。……そうだった,「ながら」で終点の大垣まで行かずに,名古屋で降りて桑名まで行き,そこから養老鉄道で大垣入りしたのでした。我ながら凄まじい乗り鉄根性です。写真の撮影時刻は朝の 7 時 3 分です。「ながら」の大垣着が 5 時 51 分なので,1 時間ほどの差で寄り道できるのですね。

f:id:tak119:20180214210906p:plain

(上の図では,名古屋から桑名までJR関西本線のルートを着色していますが,実際に乗車したのは近鉄名古屋線です。)

ちなみに養老鉄道は大垣から先も揖斐駅まで延びていますが,その区間はいまだに乗車できていません。樽見鉄道もです。岐阜県盲腸線的な私鉄が多いのですが,いつか乗りつくしたいと思います。

 

特急でしか乗れない区間がある

大垣からは東海道線も支線が出ています。赤坂支線に寄り道しました。

f:id:tak119:20120803072918j:plain

また,大垣から米原へ抜けるときにも垂井支線と呼ばれる別ルートがあって,東海道線の在来線は経由しないので,この区間を通るには特急に乗らないといけません。せっかくなので米原までは乗車券と特急券を買い,「特急しらさぎ」に乗ってこのルートを乗りつぶします。18 きっぷでは,特急を利用するときはその区間の運賃も必要です。でもこの区間だけなら出費もそれほどかさみません。

f:id:tak119:20180214211024p:plain

 

いざ岡山!を過ぎて四国へ

1 日目のメインは,岡山近辺の鉄道の未乗区間を乗りつぶす計画です。岡山といいながら,まずは本四備讃線に乗って四国入りします。四国は一度周遊したことがあるのですが,尾道からバスで今治に入り,(2 日かけて鉄道で半周し)鳴門からバスで神戸へ抜けたので,鉄道で入るのはこれが初めてなんですね。

f:id:tak119:20120803142302j:plain    f:id:tak119:20120803153621j:plain

土讃線はすでに乗りつぶしていたので,坂出到達後すぐに本州へ引き返します。乗り鉄でない人から見たら意味不明な行動ですね。岡山へ戻る途中,宇野線が延びているのでそちらにも寄ります。

f:id:tak119:20180214212155p:plain

 

 

吉備しくも なんの倉敷 でき総社

岡山からは倉敷まで足を延ばして,水島臨海鉄道に乗車します。時間があれば倉敷の街並みを歩いてめぐりたかったのですが,今回は鉄道乗車を優先します。

f:id:tak119:20120803173854j:plain  f:id:tak119:20120803174039j:plain

工業地帯に向けて鉄道が走っているなんて,さすが大都会岡山(倉敷だけど)。

倉敷からは吉備線に乗って岡山に戻るために,総社へ向かいます。総社へは伯備線が延びているのですが,倉敷の次の清音駅からは,井原鉄道と線路を共有しています。伯備線は前に乗り通したことがあるので(くしくもちょうど 1 年前に乗っていました),清音(きよね)駅でいったん降りて,井原鉄道線に乗りなおすことにしました。明日はこの清音駅から井原鉄道で福山まで行く予定なので,ここの区間を今日のうちに乗っておくと乗りつぶしがラクなのもあります。総社まで行くと引き返しの列車が一本遅いものになってしまうんですね。

f:id:tak119:20120803185222j:plain  f:id:tak119:20120803190304j:plain f:id:tak119:20120803185945j:plain

清音駅井原鉄道線の列車を待つ間,明日用の井原鉄道線 1 日フリーきっぷを購入しました。それでもまだ時間が余っていたので,駅周辺を散策しました。当時すでに総社市に編入されていましたが,この駅の所在地は清音村という自治体でした。夏の夕間暮れ,静かな住宅街の風景です。

f:id:tak119:20180214212227p:plain

 

大都会岡山の夜

総社駅到着後,吉備線で岡山まで戻ります。すでに日没を過ぎていたので,風景はよくわかりませんでしたが,住宅街が続いていたように思います。この路線,現在では「桃太郎線」なんて愛称がつけられているのですね。

f:id:tak119:20120803200536j:plain

岡山に着いた後は,市電に乗ります。個人的には市電が走っているだけで,その街への愛着が 10% 増しになります。市電は東山方面と清輝橋方面の 2 路線が走っています。

f:id:tak119:20120803210935j:plain

列車に乗ると終着駅の駅名標と車両は写真に収めておくはずなのですが,市電の車両は撮影していなかったようです(東山駅は映りが悪かったので上げていません)。

そのかわり,松屋の写真がありました。この日の夕飯は例にもれず松屋でした。

市電を乗り終えたのが夜 9 時過ぎだったので,その気になれば津山線で津山まで行って戻ってこれたのですが,そんな気力はなかったようです。津山線は意外と本数が多く,遅くまで走っています。乗り鉄精神から言うともったいない判断でしたが,新たな目的地に進むわけでもなく,夜中に山中の路線を乗ってもあまり面白くないんですね。

といってもネットカフェのフリータイムまではまだ時間があったので,駅前のゲームセンターに寄ってQMAクイズマジックアカデミーというクイズ型アーケードゲーム)に興じていました。その時出題された問題で今でも覚えているのが,

「新幹線という地名がある静岡県にある町の名前は?」

という問題です。答えは「函南(かんなみ)町」です。東海道新幹線丹那トンネルが通っていて,その工事作業者の宿場だったかで新幹線という字名が付いた,という話を読んだことがあります。この問題は自分ひとりだけ正解だったので快感でした。おかげさまでその回は優勝しましたよ。

 

大都会岡山は駅前にネットカフェもあって,松屋もあって,ゲームセンターもあって,一人旅の宿泊地としては申し分ない場所でした。本日はここまで。明日は中国山地を山陰へ抜けつつ,九州へ向かいます。

 

【記録】

<乗車行程>(金額の明記がないものは青春 18 きっぷを使用)

和田町2245---(相鉄線湘南台行 270円)---2255二俣川2257---(相鉄線)---2319海老名2324---(小田急線急行 440円)---006小田原031---(快速ムーンライトながら 510円)---521名古屋/近鉄名古屋530---(近鉄名古屋線急行・鳥羽行 430円)---550桑名553---(養老鉄道 790円)---702大垣721‐‐‐(東海道本線)---728美濃赤坂731---(東海道本線)---737大垣821---(特急しらさぎ 1 号・富山行 1,380円)---851米原900---(東海道本線網干行)---934野洲944---(東海道本線新快速)---1146姫路1205---(山陽本線播州赤穂行)---1224相生1225---(山陽本線)---1337岡山1342---(JR宇野線快速・高松行)---1419坂出1424---(宇野線快速・岡山行)---1448茶屋町1511---(宇野線)---1534宇野1541---(宇野線)---1604茶屋町1608---(宇野線)---1629岡山1632---(山陽本線・糸崎行)---1649倉敷/倉敷市1653---(水島臨海鉄道 330円)---1720三菱自工前1731---(水島臨海鉄道 330円)---1755倉敷市/倉敷1806---(伯備線・新見行)---1813清音1826---(井原鉄道線 180円)---1830総社1854---(吉備線)--- 1938岡山/岡山駅前---(岡山電鉄)---東山---柳川---清輝橋---岡山

 

 

<新規乗車区間

JR東海道線美濃赤坂線) 大垣~美濃赤坂~大垣 5.0 キロ

JR東海道線(新垂井経由) 大垣~関ヶ原 13.8 キロ

JR宇野線 岡山~宇野 32.8 キロ〔完乗〕

JR本四備讃線JR西日本茶屋町~児島 12.9 キロ

JR本四備讃線JR四国) 児島~宇多津 18.1 キロ〔完乗〕

JR吉備線 総社~岡山 20.4 キロ〔完乗〕

JR線計 103.0 キロ

 

近鉄名古屋線 近鉄名古屋~桑名 23.7 キロ

養老鉄道養老線 桑名~大垣 43.0 キロ

水島臨海鉄道倉敷市三菱自工前 10.4 キロ〔完乗〕

井原鉄道線 清音~総社 3.4 キロ

岡山電鉄東山本線 岡山駅前~東山 3.1 キロ〔完乗〕

岡山電鉄清輝橋線 柳川~清輝橋 1.6 キロ〔完乗〕

私鉄線計 85.2 キロ

2018年センター試験 数学II・B を解いてみたその6【第5問】

数学 II・B も最終問題になりました。第 5 問「(確率分布と)統計(的な推測)」を解いていきます。前課程の「統計とコンピュータ」の頃から,数列やベクトルが全く手に負えなかったときの穴場のような扱われ方をしてきた面もある分野です。しかし今年の出題でいえば,数列・ベクトルは最低限の知識のみでも解ける問題がしっかり確保されているように感じ,当領域も今回は母比率推定といったかなり入り込んだところまで問うてきているので,難易度としては 3 問とも均等だったように思います。

実際の問題は下記を参照してください。

大学入試センター試験(2018年度) 問題・解答速報 - 毎日新聞

 

第 5 問 

(1)

はじめは確率分布の問題です。問題設定をしっかり理解できれば,数 A の知識でも解答できるでしょう。

2,4,6,…,2a のカードから 1 枚引く,という試行です。数字(確率変数)が偶数になっただけで,事象としては自然数の書かれたカードを引くのと変わりません。a 枚のカードから特定の  枚を引く確率(問題文は「X=2a となる確率」)は, \displaystyle \frac{1}{a} です。

次に,a=5 のときに X(カードの数字)の期待値と分散を求めよう,という問題です。具体的に言えば,カードの数字は 2, 4, 6, 8, 10 の 5 枚,ということです。よって期待値(平均)E(X) は

 \displaystyle E(X)={1}{5}(2+4+6+8+10)=6

です。分散 V(X) は,偏差から求めてもよいですし,2 乗平均を用いて求めてもよいでしょう。

 

(偏差から求める方法)

X の各偏差は -4, -2, 0, 2, 4

偏差を 2 乗して 16, 4, 0, 4, 16

和の平均が分散となるので  \displaystyle V(X)=\frac{1}{5}(16+4+0+4+16)=8

 

( 2 乗平均を用いて求める方法)

 X^2 は 4, 16, 36, 64, 100

 X^2 の平均は   \displaystyle V(X^2)=\frac{1}{5}(4+16+36+64+100)=44

よって分散は   \displaystyle V(X)=E(X^2)-\{ E(X)\} ^2=44-6^ 2=8

 

いずれにせよ,分散は 8 となります。

次に,変数の変換を行います。sX+ts をかけて t をたす)という変換ですが,今回は平均と分散の値がわかっていて,そこから st の値を求める流れです。変換に寄る平均と分散の変化については,ここでは事実だけ確認します。

平均は,変換の四則演算がまるごと反映されるのでした。よって変換後の平均は  6s+t という値になります。

また,分散は乗除のみ,しかも乗じた数の 2 乗が反映されるのでした。よって変換後の分散は   8s^2 という値になります。

以上から,  6s+t=20, \; 8s^2 =32 を解いて, s=2, \; t=8 となります。

最後に,いま正体が明らかになった変換後の確率変数  2X+8 が 20 以上になる確率を求めます。 式を作れば, 2X+8 \geqq 20 となる確率です。これは変換前に戻せば, X\geqq 6 ですね。はじめの状態で X が 6 以上となる確率を求めればよいわけです。したがって X=6, 8, 10 の 3 通りがあるので,確率は \displaystyle \frac{3}{5}=0.6 です。

 

(2)

まず基本的な確率を 1 つ求めます。この後の数値にかかわってくるので正確に求めましょう。といっても,「3 枚のカードを横 1 列に並べるとき,左から小さい順に並んでいる事象 A 」の起こる確率なので,3 枚の並べ方が  3!=6 ,確率は  \displaystyle \frac{1}{6} と出すのは難しくないでしょう。

「この試行を 180 回繰り返す」とあるので,反復試行です。確率変数 Y は二項分布 \displaystyle B\left( 180,\frac{1}{6}\right) にしたがいます。よって Y の平均 m\displaystyle m=180\cdot\frac{1}{6}=30,分散  \sigma ^2\displaystyle \sigma ^2 =180\cdot\frac{1}{6}\left( 1-\frac{1}{6}\right) =25 となります。

ここで,事象 A が 180 回中 18 回以上 36 回以下起こる確率を求めます。正確に求めると,反復試行の確率の求め方から  \displaystyle {}_{180}\mathrm{C}_{k}\left(\frac{1}{6}\right) ^k \left(\frac{5}{6}\right) ^{180-k}k=18 から k=36 までを合わせた値になります。が,そんなものを求めると手間がかかりすぎるので,正規分布で近似するのですね。

Y は近似的に正規分布  N\left( 30, 25\right) にしたがいます。この先はほぼアルゴリズム的なプロセスですが,順を追って見ていきましょう。

まず,正規分布を平均 0,標準偏差 1 にする(標準化する)ために, \displaystyle Z=\frac{Y-m}{\sigma} という変換を行います。 今回の場合  \displaystyle Z=\frac{Y-30}{5} です。これを用いて Y が 18 以上 36 以下となる確率を求めていきます。Y に 18 と 36 を代入し,Z に変換した値で確率を調べます。

 \displaystyle P(18\leqq Y\leqq 36)=P\left( \frac{18-30}{5}\leqq Z\leqq\frac{36-30}{5}\right) =P(-2.40\leqq Z\leqq 1.20)

です。すなわち,求める確率は Z が -2.40 以上 1.20 以下となる確率です。標準化した正規分布なので,ここで正規分布表を見て値を調べます。表の見方としては,「0 からその値までの範囲をとる確率」が載っているので,求める範囲によっては工夫が必要です。分布曲線は y 軸に関して対称なので,負の値であればそのまま正の値に置き換えることができます。したがって

 \displaystyle P(-2.40\leqq Z\leqq 1.20)=P(0\leqq Z\leqq 2.40)+P(0\leqq Z\leqq 1.20)

 =0.4918+0.3849=0.8767\fallingdotseq 0.88

と求められます。

f:id:tak119:20180210200135j:plain

なお,正規分布に近似せずに求めた確率の(真の)値も調べてみました。

Excel を使うと Combination の計算も瞬時にやってくれます(もちろん,正規分布の確率も求められます)。以下がその結果です。

f:id:tak119:20180210180638p:plain

確率は 0.90 になりました。近似で求めた値との相対誤差が 2% 以上あり,ずいぶん大きいと思うのですが,求め方はこれでいいんだよな??

 

(追記)

近似精度を高めるのであれば,「半整数補正」を行う方法があります。そもそも,正規分布は連続型確率分布なので,確率変数が 1 つの値をとる確率は 0 です。そこで, \displaystyle P(X=k)=P(k-0.5\leqq X\leqq k+0.5) として正規化する方法です。今回の問題は Y が 18 以上 36 以下と幅があるのですが,これも半整数補正してみると

  \displaystyle P(18\leqq Y\leqq 36)=P(17.5\leqq Y\leqq 36.5)

  \displaystyle =P(-2.5\leqq Z\leqq 1.3)=0.4938+0.4032=0.8970

ということで,真の値との誤差は 1000 分の 1 以下におさえられました。ただし高校数学では半整数補正を扱わないので,このより正確な求め方は「不正解」となりますのであしからず。

(追記終)

(3)

 次は標本調査における母比率の推定です。集団の一部から得た比率から全体の比率を推定する際に,ある確率のもとでどのくらいの範囲に収まるか,という考察です。その場であれこれ考えてもらちが明かないので,ある程度式の形を知っているかどうかで出来具合が決まってくるでしょう。

標本は 400 人中 320 人が賛成であるということなので,標本比率は \displaystyle \frac{320}{400}=0.8 です。(1), (2) もそうでしたが,ちょっとした確率を 1 つ求めるだけで得点できる,という点では統計は「穴場」なのかもしれません。

さて,この比率を有権者全体で考えたときにどのくらいブレるのかを求めます。もうすこしちゃんとした言い方をすると,「有権者の中から同様に 400 人の標本調査を 100 回行った場合,95 回は比率 p が含まれると期待できる範囲」として「p に対する信頼度 95% の信頼区間」を求めます。ややこしいですね。

理屈は割愛して,範囲を算出する式は,

 \displaystyle 1.96\sqrt{\frac{p (1-p)}{n}}

です。いま,比率 p が  \displaystyle p=0.8=\frac{4}{5} (計算のときは分数のほうがよい),標本の大きさ n が 400 なので

 \displaystyle 1.96\sqrt{\frac{4}{5}\cdot\frac{1}{5}\cdot\frac{1}{400}}=1.96\cdot \frac{2}{5}\cdot \frac{1}{20}=0.0392

という値が算出されます。これが 0.8 を中心としたのいわゆる「誤差」で,信頼区間

 \displaystyle 0.8-0.0392\leqq p\leqq 0.8+0.0392

マークは小数第 2 位までなので

 \displaystyle 0.76\leqq p\leqq 0.84

となります。

ちなみに,式の 1.96 という値は,標準正規分布において確率が 95% となるときの確率変数 Z の値です。平均 0 から両側の範囲なので,正規分布表では半分の 0.475 をとるときの値となります。

次に標本の大きさや比率が変わったときに,信頼区間の幅(要するに誤差)がどのように変化するかを考察していきます。いま求めた信頼区間の幅を  \displaystyle L_{1},標本の大きさは 400 のまま変えずに比率が 0.6 だったときの幅を  \displaystyle L_{2},標本の大きさを 500 にして比率が 0.8 で変わらなかったときの幅を  \displaystyle L_{3} としています。

さきの式に値を変えて代入しなおせばよいですね。大小関係を比べるのに,最後まで値を求める必要はありません。

 \displaystyle \frac{L_{1}}{2}=1.96\sqrt{\frac{4}{5}\cdot\frac{1}{5}\cdot\frac{1}{400}}=1.96\cdot \frac{2}{5}\cdot \frac{1}{\sqrt{400}}

 \displaystyle \frac{L_{2}}{2}=1.96\sqrt{\frac{3}{5}\cdot\frac{2}{5}\cdot\frac{1}{400}}=1.96\cdot \frac{\sqrt{6}}{5}\cdot \frac{1}{\sqrt{400}}

 \displaystyle \frac{L_{3}}{2}=1.96\sqrt{\frac{4}{5}\cdot\frac{1}{5}\cdot\frac{1}{500}}=1.96\cdot \frac{2}{5}\cdot \frac{1}{\sqrt{500}}

区間の幅」は標本比率を中心としてプラス側とマイナス側に広がるので,比べる値はそれぞれ 2 で割ってあります。異なるところだけを見比べていきましょう。

まず L_{1}L_{2} です。比率だけが違っていたので, \displaystyle \frac{2}{5} と  \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{5} の部分が異なっています。 \displaystyle \frac{2}{5}\lt\frac{\sqrt{6}}{5}  なので,幅も  L_{2} のほうが大きいことがわかります。

次に L_{1}L_{3} を比べてみます。 今度は標本の大きさの部分が異なり, \displaystyle \frac{1}{\sqrt{400}}\gt\frac{1}{\sqrt{500}}  なので  L_{1} のほうが大きくなります。

以上より,大小関係は L_{3}\lt L_{1}\lt L_{2} となります。感覚的には,標本の大きさが大きいほど標本は母集団に近づき,誤差は小さくなるので,  L_{3}\lt L_{1} はすぐわかるかと思います。比率についても,\displaystyle p(1-p)=-p^2 +p=-\left( p-\frac{1}{2}\right) ^2 +\frac{1}{4} が最大になるのは  \displaystyle p=\frac{1}{2} のときなので,そこから離れるほど値は小さくなる,ということがわかれば式を立てずとも大小関係を判断することができます。

 

これをもって数学 II・B も解き終わりました。今回扱った統計の領域については,センター試験では処理技能が主に測られている感じを受けます。しかし,式の導出や近似の意味など,理屈的なところも突っ込んでみると面白いので,いつかの機会に触れてみたいと思います。

2018年センター試験 数学II・B を解いてみたその5【第4問】

第 4 問「ベクトル」を解いていきます。今回は平面のみにとどまっていますが,他の問いと同様に確かな計算力が必要です。

実際の問題は下記を参照してください。

大学入試センター試験(2018年度) 問題・解答速報 - 毎日新聞

 

第 4 問 

まずは与えられた条件から図をかいてみましょう。

f:id:tak119:20180207212954j:plain

私は三角形 ABC といわれると上のような形をかきますが,皆さんはどうでしょうか。ちょっとうっかりすると AC が底辺の二等辺三角形ぽくなったりして,一般的な三角形をかくのは意外と難しいです。

今回は,3 つのベクトルの起点が三角形の内部の点 F という例年に比べるとイレギュラーな設定です。が,位置関係に注意をすれば考えることは同じなのでひるまずに進めていきましょう。

 

(1)

まず \displaystyle \overrightarrow{\rm{AB}} を \displaystyle \overrightarrow{p} と  \displaystyle \overrightarrow{q} で表します。△FABに着目すれば,

\displaystyle \overrightarrow{\rm{AB}}=\overrightarrow{\rm{FB}}-\overrightarrow{\rm{FA}}=\overrightarrow{q}-\overrightarrow{p}

です。よって

\displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{AB}}\right| ^2=\left( \overrightarrow{q}-\overrightarrow{p}\right) ^2=\left|\overrightarrow{p}\right| ^2 -2 \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2 …①

となります。マークは \displaystyle \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q} の係数のところのみなので,展開公式がわかっていれば簡単ですね。

ここで求めた \displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{AB}}\right| ^2 は最後の (4) で使うことになります。

 

(2)

今度は \displaystyle \overrightarrow{\rm{FD}} を \displaystyle \overrightarrow{p} と  \displaystyle \overrightarrow{q} で表せという問題です。これも △FAB に着目すれば,FD は頂点 F から対辺の内分点に引いた線なので,比を使って式が作れます。AD:DB=1:3 であるから

\displaystyle \overrightarrow{\rm{FD}}=\frac{3\overrightarrow{p}+1\overrightarrow{q}}{3+1}=\frac{3}{4}\overrightarrow{p}+\frac{1}{4}\overrightarrow{q} …②

となります。

 

(3)

次は \displaystyle \overrightarrow{\rm{FD}} と \displaystyle \overrightarrow{r}, \displaystyle \overrightarrow{\rm{FE}} と \displaystyle \overrightarrow{p} がそれぞれ平行なので, \displaystyle \overrightarrow{\rm{FD}}=s\overrightarrow{r}, \; \overrightarrow{\rm{FE}}=t\overrightarrow{p} とおいて st を求めよう,という問題です。この先の式を見ると, \displaystyle \overrightarrow{q} を 2 通りに表して係数を比較するという方針であることがわかります。

\displaystyle \overrightarrow{\rm{FD}}=s\overrightarrow{r} と ② より

\displaystyle s\overrightarrow{r}=\frac{3}{4}\overrightarrow{p}+\frac{1}{4}\overrightarrow{q}

であるから

\displaystyle \overrightarrow{q}=-3\overrightarrow{p}+4s\overrightarrow{r} …③

これは分母を払って式変形するだけです。

\displaystyle \overrightarrow{\rm{FE}}=t\overrightarrow{p} のほうは,まず \displaystyle \overrightarrow{\rm{FE}} を \displaystyle \overrightarrow{q} と  \displaystyle \overrightarrow{r} で表す必要があります。これも点 E が辺 BC の分点なので, △FBC に着目して

\displaystyle \overrightarrow{\rm{FE}}=\frac{(1-a)\overrightarrow{q}+a\overrightarrow{r}}{(1-a)+a}=(1-a)\overrightarrow{q}+a\overrightarrow{r}

となるので

\displaystyle t\overrightarrow{p}=(1-a)\overrightarrow{q}+a\overrightarrow{r}

\displaystyle \overrightarrow{q}=\frac{t}{1-a}\overrightarrow{p}-\frac{a}{1-a}\overrightarrow{r} …④

です。この ③ と ④ を比べて(本文では省略されていますが,\displaystyle \overrightarrow{p}\neq 0, \; \overrightarrow{r}\neq 0, \; \overrightarrow{p} かつ平行でないことの確認が必要です。まぁ省略するほど自明ということですが)

\displaystyle -3=\frac{t}{1-a}, \; 4s=-\frac{a}{1-a}

\displaystyle s=\frac{-a}{4(1-a)}, \; t=-3(1-a)

と求められます。複雑そうな式ですが,(1-a) を展開せずに変形すればそれほど面倒ではないです。

 

(4)

問題の設定が意味ありげですが,とりあえず素直に計算していきたいと思います。

①は (1) で求めた \displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{AB}}\right| ^2=\left|\overrightarrow{p}\right| ^2 -2 \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2

です。あと \displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{BE}}\right| ^2 も求めます。

\displaystyle \overrightarrow{\rm{BE}}=\overrightarrow{\rm{FE}}-\overrightarrow{\rm{FB}}=t\overrightarrow{p}-\overrightarrow{q}

であるから

\displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{BE}}\right| ^2=t^2\left|\overrightarrow{p}\right| ^2 -2t \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2

となります。 \displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{AB}}\right| =\left|\overrightarrow{\rm{BE}}\right| としたので  \displaystyle \left|\overrightarrow{\rm{AB}}\right| ^2 =\left|\overrightarrow{\rm{BE}}\right| ^2 で,また  \displaystyle \overrightarrow{p}=1 より

\displaystyle \left|\overrightarrow{p}\right| ^2 -2 \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2 =t^2\left|\overrightarrow{p}\right| ^2 -2t \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2

\displaystyle 1-2 \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2=t^2-2t \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\left|\overrightarrow{q}\right| ^2

\displaystyle t^2 -2(t-1) \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}-1=0

\displaystyle \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}=\frac{t^2 -1}{2(t-1)}=\frac{t+1}{2}=\frac{-3(1-a)+1}{2}=\frac{3a-2}{2}

となります。

 

問題は以上です。

これも最後に内積を求めて,だから何なんだ,というような問題ですが,結果から少し遊んでみようと思います。

たとえば,\displaystyle a=\frac{2}{3} とすれば,\displaystyle \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}=0 すなわち \displaystyle \overrightarrow{p}\perp\overrightarrow{q} です。すると BFは二等辺三角形 BEA の垂直二等分線となるわけですが,ちょうど

f:id:tak119:20180207213003j:plain

よくセンター試験の裏ワザなんかだと,こういう特殊な場合をうまく設定して必要条件から数値を導き出す……なんてやり方があったりしますが,今回は点 D が 1:3 の内分点なこともあって対称性のあるような形が浮かびません。何かいい形を考えた人は教えてください。

 

 

2018年センター試験 数学II・B を解いてみたその4【第3問】

第 3 問からは数学 B の内容に入り,3 問中 2 問を選んで解くことになります。第 3 問が「数列」,第 4 問が「ベクトル」,第 5 問が「統計」です。

実際の問題は下記を参照してください。

大学入試センター試験(2018年度) 問題・解答速報 - 毎日新聞

 

第 3 問 

(1) は等差数列  \{ a_{n}\} ,(2) は等比数列   \{ b_{n}\} についての問題です。いずれも部分和から一般項を求め,さらに和を求めるという基本的な知識が試される問題です。

(1)

条件からそれぞれ式を作っていきましょう。初項を a,公差を d とおくと,「第 4 項が 30」は

 a+3d=30 …①

と表せます。また,「初項から第 8 項までの和が 288」とのことなので,和の公式を用いて

\displaystyle \frac{8}{2}(2a+7d)=288, \; 2a+7d=72 …②

と表せます。①×2-② より  d=12, \; a=-6 すなわち初項が -6,公差が 12 とわかります。一般項は

\displaystyle a_{n}=12n-18

となります。また,初項から第 n 項までの和 \displaystyle S_{n}

\displaystyle S_{n}=\frac{n}{2}(-6+12n-18)=6n^2 -12n

です。

 

(2)

初項を b,公比を r とおくと,「第 2 項が 36」は

\displaystyle br=36

と表せます。また,「初項から第 3 項までの和が 156」は

\displaystyle b+br+br^2 =156

です。和の公式で

\displaystyle \frac{b\left( r^3 -1\right)}{r-1}=156

\displaystyle \frac{b(r-1)\left( r^2 +r+1\right)}{r-1}=156

\displaystyle b\left( r^2 +r+1\right) =156

と表してもよいですが,手間がかかるので初めから 3 項分を書き並べてしまうのがよいでしょう。この式に r をかけると

\displaystyle br+br^2 +br^3 =156r

\displaystyle br=36 を代入して

\displaystyle 36+36r+36r^2 =156r

\displaystyle 36r^2 -120r+36=0

という 2 次方程式式に帰着できます。はじめに r をかけるなんてことをしましたが,思いつかなくても先に \displaystyle br=36 を代入して整理していると,分母に r が出てきて必然的に r をかけて消すことになるので大丈夫です。

さて,方程式を解いて

\displaystyle 3r^2 -10r+3=0

\displaystyle (3r-1)(r-3)=0

公比 r は 1 より大きいという条件があるので, r=3, \; b=12,すなわち初項が 12,公比が 3 です。一般項は

\displaystyle b_{n}=12\cdot 3^{n-1}

となります。初項から第 n 項までの和 \displaystyle T_{n}

\displaystyle T_{n}=\frac{12\left( 3^{n}-1\right) }{3-1}=6\left( 3^{n}-1\right)

です。

 

(3)

 さきの 2 つの数列を使って,新たな数列 \displaystyle \{ c_{n}\} を定義しています。この数列の一般項を求める問題ですが,定義式に \displaystyle \sum があります。すなわち和を用いた数列なので,\displaystyle S_{n} から一般項を求めるときのように,「隣接項との差をとる」という方法が類推できると,見通しがよくなります。誘導でも,階差数列 \displaystyle d_{n}=c_{n+1}-c_{n} を作って考察が進んでいきます。

実際に様子を見てみましょう。

\displaystyle c_{n+1}=(n+1)\left( a_{1}-b_{1}\right) +n\left( a_{2}-b_{2}\right) +\cdots +2\left( a_{n}-b_{n}\right) +\left( a_{n+1}-b_{n+1}\right)

となるわけですが,この式から \displaystyle c_{n} を引いたのが  \displaystyle d_{n} です。項(a, b の添え字の同じパーツ)ごとに引き算してみましょう。 

f:id:tak119:20180207185421j:plain

そろえて書いてみると,各  \displaystyle \left( a_{k}-b_{k}\right) の項の係数が 1 つずつずれているのがわかります。 \displaystyle c_{n+1} のほうがつねに 1 つ大きいので,引き算すると \displaystyle \left( a_{k}-b_{k}\right) が 1 から n+1 まで並ぶことになり,

 \displaystyle d_{n}=\left( a_{1}-b_{1}\right) +\left( a_{2}-b_{2}\right) +\cdots +\left( a_{n}-b_{n}\right) +\left( a_{n+1}-b_{n+1}\right)

 \displaystyle =\left(a_{1}+a_{2}+\cdots +a_{n}+a_{n+1}\right) -\left(b_{1}+b_{2}+\cdots +b_{n}+b_{n+1}\right)

 \displaystyle =S_{n+1}-T_{n+1}

となります。

ここに (1), (2) で求めた和の式

\displaystyle S_{n}=6n^2 -12n, \; T_{n}=6\left( 3^{n}-1\right)

nn+1 に変えた

\displaystyle S_{n+1}=6(n+1)^2 -12(n+1), \; T_{n}=6\left( 3^{n+1}-1\right)

を代入して

\displaystyle d_{n}=S_{n+1}-T_{n+1}

\displaystyle =6(n+1)^2 -12(n+1)-6\left( 3^{n+1}-1\right)

\displaystyle =6n^2 +12n+6-12n-12-6\cdot 3^{n+1}+6

\displaystyle =6n^2 -2\cdot 3\cdot 3^{n+1}

\displaystyle =6n^2 -2\cdot 3^{n+2}

となって \displaystyle d_{n}n で表せました。また

\displaystyle c_{1}=a_{1}-b_{1}=-6-12=-18

なので,\displaystyle c_{n} の一般項は階差数列を使った公式を用いて

\displaystyle c_{n}=c_{1}+\sum^{n-1}_{k=1}d_{n}

\displaystyle =-18+\sum^{n-1}_{k=1}\left( 6n^2 -2\cdot 3^{n+2}\right)

\displaystyle =-18+\frac{6}{6}n(n-1)(2n-1)-\frac{54\left( 3^{n-1}-1\right)}{3-1}

\displaystyle =2n^3 -3n^2 +n+9-27\cdot 3^{n-1}

\displaystyle =2n^3 -3n^2 +n+9-3^{n+2}

となります。これでようやく \displaystyle c_{n} の一般項までたどり着けました。 n-1 項までの和であることに注意してください。特に等比数列の和の部分の 3 の指数に迷う人がいるかもしれませんが,k が 1 から n-1,すなわち項数が n-1 個なので,指数も \displaystyle 3^{n-1} となります。

 

念のため n=1, 2 のときで確かめておきましょう(本番ではそんな事をしている時間はないですが,結構大事なことだと思います)。

\displaystyle \{c_{n}\} の初項は -18 でしたが,

\displaystyle c_{1}=2\cdot 1^3 -3\cdot 1^2 +1+9-27\cdot 3^0 =-18

第 2 項は定義から求めると

\displaystyle c_{2}=2\left( a_{1}-b_{1}\right) +\left( a_{2}-b_{2}\right) =2 (-18)+(6-36)=-66

一方,一般項から求めると

\displaystyle c_{2}=2\cdot 2^3 -3\cdot 2^2 +2+9-27\cdot 3^1 =-66

となり,確かに一致することがわかります。もちろん最初の数項が合っていたからといって一般項が正しいとは限りませんが,蓋然性は十分です。2 次試験だったらこれでひとまず安心できますね。