2013年3月 静岡の旅【2日目】<大井川鉄道>

※この記事は2013年3月に実施したものを記録したものです。本文中の内容や写真等に含まれる情報は当時のものであり,現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。

 

2013年3月10日(日) 2日目/2日

今日の目的はただひとつです。大井川鉄道線(正式には「鐵」道)に乗ります。山間を走る,場所によっては急勾配の区間を牽引して進むので,乗りとおすには半日がかりです。その分,ゆっくりと満喫したいと思います。

大井川鉄道について

大井川鉄道金谷駅から出ています。東海道の宿場で知られています。隣の島田とは距離は近いものの,大井川を隔てているので難所だったと伝わっている場所です。今では橋が何本も架けられて行き来は簡単になり,金谷町も合併により島田市の一部となっています。

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距離感がつかめるでしょうか。特に北の方は地形に沿って曲がりくねっているので,地図で見るよりも距離があります。全線で65キロあります。昨日乗った天竜浜名湖鉄道とほぼ同じ長さです。

といっても,山岳路線なので速度は遅く,時間もかかります。下の行程を見てもらうと分かりますが,比較的平地を走る本線部分の金谷~千頭間が39.5キロで73分,それに対して本格的な山岳地帯になる井川線千頭~井川間が25.5キロで111分です。平均の速さにすると,本線が時速32.5km,井川線が時速13.8kmです。今では観光路線ですが,本来はダム建設などのために敷かれた路線だそうです。境遇が黒部峡谷鉄道に似ていますね。

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金谷駅は切符を買う旅行客であふれていました。1日乗車券の大井川・アプトラインフリーきっぷを買います。価格は4,200円です。高いと思うかもしれませんが,山間部の観光路線という特殊な路線なのでそんなところでしょう。なお,普通運賃だと片道だけで3,130円かかります。

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※現在では4,400円だそうです。フリーきっぷにもいろいろ種類があるようなので,詳しくは当鉄道のページをご覧ください。

運賃 | 大井川鐵道【公式】

 

越すにまた越す 大井川

本線の終着地,千頭(せんず)駅に到着です。ちょうどイベントの日で,いつもに増して人が多いようでした。

千頭からは,アプト式の車両になります。ラックと呼ばれる歯型のレールが線路の間にあって,車両側の歯車と噛み合わせて進んでいきます。急勾配を走るための方式で,日本ではこの井川線と,在りし日の信越本線横川~軽井沢間で採用されています。

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車両はかなり小型です。レールの軌間は1067mmに改軌されたものの,トンネル等は762mm時代の規格のままなので,あまり大きくできないそうです。

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最後まで大井川に沿って走るので,車窓からは川の流れがよく見えます。谷側からはいくつも沢が流れていて,合流地点では水の色の違いがはっきりとわかって面白い光景でした。

途中,アプトいちしろ駅で連結があります。ここから長島ダム駅までは電化区間で,先頭に電気機関車を連結して進んでいきます。

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各駅の表示板には標高が書かれています。アプトいちしろ駅は396メートルです。それが1.5kmほど進んで隣の長島ダム駅になると,

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485メートルと,100メートル近く登ったことになります。車窓からも,先のレールがかなりの上り坂になっているのが見えました。

さらに進むと,少し面白い駅に到着します。奥大井湖上駅といって,名の通り長島ダムにより造られた湖にせり出したわずかな陸地にある駅です。アクセスしにくい駅ではないのですが,立地的に秘境駅の様相を醸し出しています。

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その秘境たる場所ゆえに,ここで降りる乗客がたくさんいました。湖上の橋は歩道も併設されていて,遊歩道がつながっています。

この辺りは長島ダムの建設によって水没した地域で,かつての井川線ももっと低い場所を走っていました。その遺構が湖畔沿いに見える場所があります。

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山も深くなってくると,トンネルのほかに沢を渡る陸橋もたくさん現れます。その中でも,関の沢橋梁という橋は,谷底からの高さが70メートルという高さです。列車が低速運転(もともと遅いのですが)してくれたので,車窓から下の景色を撮ってみました。

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写真だと高さが実感できないかもしれませんが,ずいぶんな場所を走っています。木々で地面は見えないものの,その木の先端でさえずっと下の方にあります。

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お昼を回って,ようやく終点の井川駅に到着しました。千頭駅のような建物もにぎわいもなく,本当に山の中という感じです。沢を駆け落ちる水の音が響きます。雪解け水でしょうか。

少し歩くと,井川ダムが見えてきます。かなり大きいダムで,奥には湖が広がっています。

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ダムの上は道路になっていて,渡ることができます。私道ではなく集落を結ぶ県道の一部です。堰堤を渡るとすぐトンネルになっています。

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自分の知っているところだと,山奥といい,ダム湖といい,奥只見ダムの風景によく似ています。ひとつ違うのは,ここが静岡市内ということです。こんなところも政令指定都市です。しかも平成の合併前から市内に含まれています。以前から興味深かったのですが,静岡県の中央部のとんがりの部分,南アルプスのところですが,全部静岡市なんですね。

湖畔は土が見えているので,この時期の水位は比較的低いみたいです。

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ダムのほとりには,資料館があります。ちょっと寄ってみることにしました。ダムの仕組みの説明展示のほか,もともとはダム建設に使われていた井川線のアプトの模型も展示されています。

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湖に沿って少し歩くと,遊覧船乗り場がありました。冬季は運休していますが,観光線としてだけでなく,湖の奥にある井川の中心部を結ぶ渡し船も運航されています。山間部となると,地形に合わせてあらゆる交通手段が必要となることがわかります。鉄道は金谷につながっていますが,モータリゼーションの波は強く,ここが静岡市に含まれたのも道路網の影響が大きいようです。

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駅前には食堂もあって,お昼をとることができました。テレビを見ると,ちょうど東日本大震災から2年になる前日だったので,『花は咲く』という曲が流れていました。以前訪れた東北のことを思い出してみたり,この地域も土砂崩れなどで何度も災害にあっていることを考えてみたり,旅愁も相まって,いろいろと物思う時間でした。

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さて出発の列車の時間が近づいてきました。井川線は本数が少ないので,当初の予定では,12時22分到着後すぐに折り返し12時46分の列車で戻るつもりでした。ところが,列車に並行してバスが走っていることが分かりました。

乗ったのは1本後の13時44分発の列車ですが,次の閑蔵駅で降りると,バスの乗車場所があります。このバスに乗ると,1本前の列車と同じくらいの時刻に千頭に着くことができます。

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このおかげで,井川でゆっくりすることができました。さらに,このバスは大井川鉄道が運行しているので,今日使っているフリーきっぷで乗ることができます。ストイックな乗り鉄の中には,上下線とも列車に乗る!という人もいると思いますが,自分は極力その地域の雰囲気にも浸りたいタイプなので,列車とバスの半々になりました。

ただ正直なところ,登山列車に比べるとバスの快適さは否めません。あのアプトで走る急勾配や高い場所からの眺めをもう一度体感してみたくはあったのですが,バス・列車それぞれのおいしいところを味わったということで。

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千頭に着いたのは2時半過ぎで,ピークは過ぎたようですがイベントの余韻でまだまだ賑わっていました。井川ではほとんど一人だったので,こうして人がたくさんいるとちょっとほっとします。まぁ夜には横浜の人ごみに紛れることになるんですけどね。

しばらくすると,SLが構内に入ってきました。実は大井川鉄道は,SLを現役でどこよりもたくさん走らせている会社なんです。あと,きかんしゃトーマスもたまに走っています。バラエティ豊富でいろいろな人が楽しめる鉄道だと思います。

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金谷行きの列車までもう少し時間があったので,大井川を散策してみました。雪解けの時期とはいえ,まだ流量は少ないようで,河原まで降りることができました。夏には全部川になるのでしょうか。

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ダム湖もいいですが,水を寄り近くで感じられるという意味では,この場所もとてもリフレッシュできます。川原にひょうたんが落ちていました。実物を見るのは初めてかもしれません。

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いよいよ千頭とも別れの時間です。さっきのSLがまだ停まっていましたが,乗るのは普通の車両です。

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半日ずっと山の中にいるのもいいものですね。帰りの東海道線の風景すらも新鮮に思えました。

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まとめ:長いだけじゃないのよ静岡は ハッハーン

金谷を5時前に出て,横浜に着いたのが8時半なので,それにしても静岡は長いですね。今回は東西の長さも南北の長さも体感することができました。面積的には格段に広いわけではないですが,山あり海ありの日本の縮図のような地域です。また関東と関西を結ぶ場所にあり,文化的にも日本の要素が詰まった場所ということで,統計的な調査では静岡県が標本に選ばれることが多いと聞いたことがあります。(18きっぷで通過してばかりでなく)ちゃんと訪れてみると,なかなか魅力の大きい県だと思います。

 

【記録】(JR線は18きっぷ使用,大井川鉄道線はフリーきっぷ使用)

<行程>(JR線は18きっぷ利用)

上島746---(遠州鉄道線 150円)---757新浜松/浜松810---(JR東海道本線・熱海行)---850金谷914---(大井川鉄道本線)---1027千頭1031---(大井川鉄道井川線)---1222井川1344---(大井川鉄道井川線)---1403閑蔵1410---(路線バス)---1440千頭1525---(大井川鉄道本線)---1637金谷1650---(JR東海道本線)---1843熱海1859---(JR東海道本線・東京行)---2027横浜

 

<新規乗車区間

大井川鐵道 大井川本線 金谷~千頭 39.5 キロ

                   井川線 千頭~井川 25.5 キロ

合計 65.0 キロ

2日間合計 96.8+65.0=161.8 キロ