ドイツ語の不規則動詞を整理してみる vol.1【幹母音 ei】

外国語(特に欧米諸語)を学習する際に避けられないもののひとつが,不規則動詞の変化を覚えることです。多くの人は,中学校で英語の不規則変化を覚えたと思います。sing-sang-sung とか。一般には,現在形(原形)-過去形-過去分詞 という並びです。ドイツ語にも(というかこちらが元祖ですが)不規則動詞があるので,自分の学習も兼ねてまとめてみることにしました。

覚えるのはいいけど

動詞の変化を覚えるときは,ひたすら口ずさんだり書いたりして暗記するのが多いと思います。もう少し実用的なやり方だと,不規則動詞を紛れ込ませた基本例文を覚えたという人もいるでしょう。

それにしても,不規則動詞の数はドイツ語だと200近くあります(小学館『ポケット プログレッシブ独和・和独辞典』の資料による)。時代の中で新しく作られた動詞は,原則規則変化をするので,これ以上増えることはありません。中には日常でめったに使わないようなものもありますが,ただ暗記するにしても,例文を作るにしても,この数を身に付けるのはかなりの努力が要ります。

英語にしろドイツ語にしろ,辞書や教科書の巻末に変化表が載っていることが多いです。編集の便宜上なのか,動詞はアルファベット順に並んでいるものがほとんどです。学習していると気づく方もいると思いますが,動詞の変化にはある程度の規則性があります。例えば英語だと sing-sang-sung と drink-drank-drung は,どちらもアクセントを持つ母音(幹母音と呼びます)が i-a-u と変化しています。このように,不規則といっても,同じ変化をするグループを作ることができるのです。

このグループ分けで不規則動詞を整理し直すと,効率よく覚えることができるのではないでしょうか。教科書もこれくらいのことをしてほしいですが,作業も勉強のうちだ,自分でやってみろ,ということなのでしょうか。それにしてはやらない先生,生徒がほとんどですが。

前置きが長くなりましたが,ドイツ語の不規則動詞を整理してみたいと思います。また,前綴りなどで派生した動詞は,原則もととなる動詞のみを載せています(例:entscheiden→scheiden を参照)。日本語の意味は,基本的なものを載せています。

なお,ドイツ語では過去分詞の場合,前綴りがある場合を除き先頭に ge- がつきます。

幹母音 ei

ei「アイ」をアクセントとしてもつ動詞の不規則変化には,2パターンあります。①ei-ie-ie ②ei-i-i です。どちらも,過去形・過去分詞は「イ」という発音になりますが,それが長いか短いかの違いになります。

ei-ie-ie

過去形・過去分詞の母音が長いほうの発音「イー」になるパターンです。

bleiben「とどまる」 bleiben-blieb-geblieben

gedeihen「成長する」 gedeihen-gedieh-gediehen

leihen「貸し借りする」 leihen-lieh-geliehen

meiden「避ける」 meiden-mied-gemieden

preisen「褒める」 preisen-pries-gepriesen

reiben「こする」 reiben-rieb-gerieben

scheiden「区別する」 scheiden-schied-geschieden

scheinen「輝く」  scheinen-schien-geschienen

schreiben「書く」 schreiben-schrieb-geschrieben

schreien「叫ぶ」 schreien-schrie-geschrien

schweigen「黙る」 schweigen-schwieg-geschwiegen

steigen「登る」 steigen-stieg-gestiegen

speien「吐く」 speien-spie-gespien

treiben「追い立てる」 treiben-trieb-getrieben

weisen「指し示す」 weisen-wies-gewiesen

zeihen「とがめる」 zeihen-zieh-geziehen

 

ei-i-i

「アイ」から「イ」へ,母音が短くなるので,過去形・過去分詞では,母音の後の子音が重なるものがあります。

beißen「噛む」beißen-biss-gebissen

gleichen「比べる」 gleichen-glich-geglichen

gleiten「滑る」gleiten-glitt-geglitten

greifen「つかむ」greifen-griff-gegriffen

kneifen「つねる」kneifen-kniff-gekniffen

leiden「苦しむ」leiden-litt-gelitten

pfeifen「笛を吹く」pfeifen-pfiff-gepfiffen

reißen「引き裂く」reißen-riss-gerissen

reiten「馬に乗る」reiten-ritt-geritten

scheißen「くそをする」scheißen-schiss-geschissen

schleichen「忍び歩く」 schleichen-schlich-geschlichen

schleifen「研ぐ」schleifen-schliff-geschliffen

schmeißen「投げる」schmeißen-schmiss-geschmissen

schneiden「切る」schneiden-schnitt-geschnitten

schreiten「歩く」schreiten-schritt-geschritten

spleißen「割る」spleißen-spliss-gesplissen

streichen「塗る」 streichen-strich-gestrichen

streiten「争う」streiten-stritt-gestritten

weichen「屈する」 weichen-wich-gewichen

 

こうしてみると,2パターンの変化の見分け方が見えてきます。②では子音が重なるものがあると書きましたが,ほとんどが当てはまりますね。もともと子音が2文字なのは,ch のみで(ß も ss とみれば2文字ですが),変化してもそのままです。一方,①の動詞はそもそも幹母音の後の子音が1文字です。この視点からもう少し詳しくみてみると,次のようにまとめることができます。

 

幹母音が ei の不規則動詞のパターン

幹母音 ei の後の子音が2文字(ch または ß)であれば,②ei-i-i の変化になる。

幹母音 ei の後の子音が1文字もしくは存在しないとき,-en, -ben, -gen, -hen, -nen,  -sen は ①ei-ie-ie となる。一方,-fen, -ten は ②ei-i-i となり,過去形・過去分詞では子音を重ねる。

これで見分けがきかないのが -den で,meiden, scheiden は①,leiden, schneiden は②で子音が tt となります。

 

最後に,幹母音 ei の動詞で1つだけ例外があるので紹介しておきます。

heißen「~と言う」

変化は heißen-hieß-geheißen です。パターン通りなら過去形が hiss あるいは過去分詞が gehießen となるところですが,過去形は①,過去分詞は現在形と同形です。よく使う動詞なので,これだけ別で覚えておくとよいでしょう。

 

 

今回は前置きもあってあまり紹介できませんでしたが,次回もこんな感じで幹母音ごとに整理していきたいと思います。