2018年センター試験 数学I・A を解いてみたその9【第5問】
いよいよ最終回です。図形の単元です。内容としては平面図形・空間図形いずれも扱っているのですが,センター試験では平面図形の問題しか見たことがありません。でもそのうちオイラーの多面体定理とかをテーマに出題されそうな気もします(あまり探究的すぎると,整数の分野等とまたがってしまうので,分野別に出題しているセンター試験では難しいところでもありますが)。
問題は下記を参照ください。
大学入試センター試験(2018年度) 問題・解答速報 - 毎日新聞
まず△ABCを与えられている条件通りに図示しましょう。
∠A の二等分線,ときたので,「対辺の比だな」と目星がつけられたでしょうか。BD:DC=AB:AC が成り立つので,BD:CD=2:1, です。BC の長さは三平方の定理で求めましょう。焦っていると勘違いする人が多いですが,決して ではありません。それは斜辺が 2 のときです。
なので, となります。
次に円を描き足します。
辺が円を切っているので,「方べきかな」と見当をつけましょう。
AB・BE の値を求めますが,BE・BA と読み替えるとより位置がはっきりすると思います。方べきの定理より, となります。
この式に AB の長さを代入すれば,BE の長さが求められます。
です。
次に と を比べます。長さはいずれもわかっているので代入すると,
よって であることがわかります。このことから何が言えるかというと,「直線 AC と直線 DE が平行でない」ということです。比と平行線の定理から,平行となるのは のときに限られます。さらに,大小関係からどちら側で交わるかも判断しなさい,という問いです。
直線 AC と直線 DE が平行のときを基準に考えてみましょう。 のほうが小さいということは,D の位置を固定すれば,辺AB 上のある E が,平行のときよりも B の側にあるということです。したがって,直線 AC と直線 DE は C 側の延長上で交わります。
等しくないときの状態,というと,図形では「三平方の定理→鋭角 or 鈍角」とか,「円周角の定理→頂点が円の内部 or 外部」といったことは教科書でも見かけますが,比と平行線は死角でした。なかなか面白いところを突いてきたと思います。
さて,その交点を F として,今度は の長さを求めます。図と辺の比からメネラウスの定理は浮んだでしょうか。
△ABC と直線 EF においてメネラウスの定理より
が成り立つので,
となります。よって AC=1 であることから
です(最後の式を補足しておくと,AF とCF が比としてそれぞれ ⑧ と ⑤ の長さを持っているので,AC は ③ です。 は比の ① 分の長さを求めていて,それを 5 倍したのが CF の長さとなります)。
続いて,「したがって,BF の長さが求まり, であることがわかる」とあります。わかると言われても,計算しないとわかりませんが,あとで確かめるとして,ひとまず認めて進めましょう。
上の式を書きかえると,CF:AC=BF:AB となります。もう少し修正して,FC:CF=BF:BA とすると見えてきたでしょうか。△ABF において,線分 BC が ∠B の二等分線であることを言っています。
このことから,点D は ∠A の二等分線と ∠B の二等分線の交点であるので,△ABF の「内心」であることがわかります。選択肢には「内心かつ外心」のようなものはないので,答えは決まります。一応,外心でも重心でもないことの確認も後でしておきましょう。
マークは
ア:2,イ:5,ウ:3,エオ:20,カ:9,キク:10,ケ:9,コ:0,サ:4,シ:5,ス:8,セ:5,ソ:3,タ:1
これで全ての問題が終わりました。 9 回にわたりやってきましたが,書きながらいろいろ確認したり新たに気づいたりしたこともあってよかったです。気が向いたら数学 IIB もやろうと思います。
補遺として後回しにしておいた部分の確認を載せておきます。
補遺1 の確認
さきのメネラウスの定理より
です。また
であり,△ABF において三平方の定理より
よって
以上で が示されました。
補遺2「点 D は △ABF の外心でも重心でもない」ことの確認
まず,外心であれば,外心円の半径から AD=BD となるはずです。ところが
に対して,
よって となります。 なので, となり,点 D は外心ではありません。
次に,重心であれば BD:DC=2:1 なので線分 BC は △ABF の中線となります。ところがC は辺 AF の中点ではないので,矛盾となります。 よって点 D は重心ではありません。